宮尾登美子著作 「一絃の琴」
2015 01.30 Fri

先週行った黒木渚さんとのビブリオバトル。
SNSから「原稿書いたならアップして!」というお声があったので、
コチラに載せさせていただきます。(^−^)

テーマ:
「虎視眈々と 淡々と」




昨年の年の瀬に他界された宮尾登美子先生。
年始に、そのニュースを知ったときは胸が痛みで震えました。
喪失感と、そしてあぁ、これで「新作」には出会えないんだな、という思いです。

天璋院篤姫の原作者、といえば多くの人が「あぁ」と頷いてくださるでしょうか。
篤姫がそうであるように、女性が社会の中で、「生きる」ということを色鮮やかに、清濁飲み込んで克明に書かれてこられた作家さんだと、私が思います。
太宰治賞を受賞した「櫂(かい)」を筆頭に、4作に渡るといわれる自伝的小説も人気ですが、今回「虎視眈々と、淡々と」をテーマに選んだのは「一絃の琴」。
13弦ある琴の調べは、お聞きになった方も多いでしょうが、たった一本の弦しかないという一弦琴は、土佐で伝承されてきたという歴史を持ちます。
 この一弦琴奏者である二人の女性の人生を、幼少期からつぶさに描き出す、いわば二人の主人公を持つ小説。

 五歳のころ、漂泊の旅絵師の奏でる琴の音色に魅入られた、苗。
 不幸な結婚などを経つつも、ひたすらに耐えることの美徳を愛した彼女は、壮年期には何百人もの弟子を持つ一弦琴の塾長となりますが、多くの弟子の前で爪弾きつつも、一弦琴とは本来 たった一人、心あらわにして没頭するものと解釈しました。
 一方、その弟子であった蘭子は、容姿端麗・頭脳明晰。誰の目から見ても「天が二物を与えた」と称賛される人だったのですが、彼女は、一弦琴とは、多くの人の心を打ってこそ、人前で爪弾いてこそと解釈しました。
 生まれ持っての性質の差から、琴というものの解釈も対照的。
 
 正反対であるはずの二人ですが、数奇な運命は、二人の生い立ちに、驚くほどの共通点を与えます。おのおのの人生の岐路で二人が出す答えは、時に重なり、時に真逆。
 それは例えて言うなれば阿と吽。陰と陽。
どこまでも堪える苗と華やぐ蘭子、この二人の対照的な性格、一絃琴への姿勢、強さ。幕末・明治という時代の中で圧殺され圧殺されてもなお息吹く苗の個。それに対し、あらゆるものを手にしながらただ一度の敗北に狂おしく身悶えする蘭子。作者の筆は底意地が悪いほどに二人の人生を踏み躙り、斬り刻み、ただ一絃の響きのみが蕭然と漂います・・・。

 構想から発表されるまで17年。書き直すこと5回。
 実際に一弦琴の奏者として人間国宝に選ばれた秋沢久寿栄(あきざわ・くすえ)にまつわる、いわば実話をモチーフにした小説。
 
 
 虎視眈々と、一番であること、唯一であることをめざし頂点を極めていく蘭子。
 一方、淡々と、けれど胸の中に熱い琴への愛情を秘めながら中庸に生きた、苗。
 二人の女性の色褪せぬ「女の生き様」は、女の孤独とは何か。女の恋情とは何か。女の意地とは何か。様々な答えを孕んであなたのこころに届くでしょう。
 1973年直木賞受賞作。宮尾登美子著作 一弦の琴。
全編にわたって、読み手の耳にも繊細でありながら凛とした弦の音が耳に鳴り響く秀作です。



by 都竹悦子 | DATE 14:54|コメント|カテゴリー:

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